ハードコア

 音楽好きの一見紳士淑女がそのツラの皮を堂々と剥ぎ俺様アタイの思いの丈を大声で主張できるオナニー幇助オポチュニティーことMusical Batonがついに場末の工場勤務、窓のない部屋で灰色の咳を吐く俺のところにもやってきた。
 俺が毎日毎日ベルトコンベアの前でひたすらゴム人形に着色している間に、全世界のブロガーたちは責任感と義理という大義のもと厭そうな顔を浮かべつつしかし口元はゆるみっぱなしでご存知の素敵な曲を素晴らしい解説を交えつつ紹介、そして友達にバトンをまわす、なんつー愚にもつかん遊びに呆けてやがったと思うと気が狂いそうだ。ポケットのハードコアが今にも爆発しそうだ。
 しかも、バトンを渡すのは友達に限らずちょっと気になるけど話しかけづらかったあの人にも、CCCDの論争で疎遠になっちゃったあの人にも、クラスの気になるあの娘、話しかけたことないけど実は彼女のブログは知ってるんだ、本名じゃなくてハンドルネームのあの子にも、ちょっと触ってみてよただのバトンだからさ、ねぇ、触ってよ、ねぇ、な人にも、ってな具合だと想像するとハードコアを投げ付けてやりたくなる。
 そんな精液まみれのバトンを受け取った俺が感じているのはネズミ講の巨大合同集会のような雰囲気だ。万雷の拍手が聞こえる。鼓膜のすぐそばで誰かが話しかける。さぁ君も書きなさい、書いて我々とひとつになろう。

 Fxxkkkk the SYSTEM!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 黒幕の奥でニヤついている見えない敵は俺たちを操ってシステムの一部に組みこもうとしやがる。奴らとその思想に中指を立てろ!! 見えないことは無いことじゃない。想像しろ。もがけ。放棄したとき、欲と無気力にまったく支配されたとき、世界は燃えて死ぬ。だから俺は何事も恐れずひたすら考える、じっと学ぶ。動物の痛みを想像し、行ったことのない国の政情を考え、見えない経済を憂う。このバトンは言わば体制側の思想の産物だ。だから俺は全世界の「良識」を敵に回してもこんなくだらないバトンは回さないぜ。クソったれが!! 大脳を着火された気分だ。俺の血は沸点を越えて、いまにも口からハードコアが飛び出しそうだ。ウオオオオオオ。もう我慢できん。俺はバトンをへし折りネズミを踏み潰し喉を引き裂きこう叫ぶんだ。
「ハードコア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」